また、岩屋の中の本殿裏側には、鵜戸神宮の神使(しんし)となっているウサギの像がある。神使とは、一般的に祭神の使いとされ、伏見稲荷大社のキツネなどが有名である。鵜戸神宮では、主祭神が鵜草葺不合命(ウガヤフキアエズノミコト)であることから、その「鵜」の字が「卯」・「兎」と転じ、ウサギが神使となったという。
さて、この「撫でうさぎ」、その名のとおり、撫でると病気平癒や開運などの願いがかなうという。よって、この「撫でうさぎ」は、多くの参拝者から頭を撫でられ、頭の部分の色が落ちている。しかし、このウサギについては、色が落ちているからこそ、神々しく気高いのである。鵜戸神宮の「撫でうさぎ」は、人々の願いを一身に受け、長年、頑張ってきたのである。多くの人々は、このウサギに手を触れたとき、願をかけるだけでなく、どことなく愛おしい気持ちになり、いつもより豊かな気持ちになっているのではないだろうか。
やはり、旅は実際に見て、触れて、多くのことを実感するのがよい。宮崎県内には日向神話にまつわる多くの風景や神社がある。そこに、直接、足を運び、多くの実感を得ることは、デジタル化された社会を生きる我々に、多くの潤いを与えてくれるのではないだろうか。
各地に様々な伝承や神話の世界を舞で表現した「神楽」が大切に継承され、暮らしの中に神々の物語が息づく宮崎県。
神々の物語を思い描きながらこの地を旅すれば、風景の中に、太古の神々の面影や物語を大切に紡いできた人々の想いを感じ取ることができます。
悠久の時を越え、日向の地に残る神々の物語を紐解く旅へでかけましょう。
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大館 真晴
宮崎県立看護大学教授
1972年宮崎県生まれ
國學院大學大学院文学研究科日本文学専攻博士課程後期修了、博士(文学)
奈良県立万葉文化館研究協力員 |
主な著書に『日本書紀の作品論的研究 人物造形のあり方を中心に 』(國學院大學大学院研究叢書)、
『日本書紀【歌】全注釈』(共著、笠間書院)、『日本書紀と古代天皇の謎』 (共著、株KADOKAWA)など。