昔から高千穂神社は高千穂峡一帯を境内地としていましたが、地域との結びつきの強さは、神社に伝わる祭礼からも感じられます。
6月31日は夏越の祓い。高千穂神社では人形(ひとがた)流しという独特のお祓いも行われます。参拝者は、茅の輪をくぐった後、1年間の罪穢れを人形に切った紙で体をなでて、神社に奉納します。その人形は、宮司がお祓いをした後に、高千穂峡に流しに行くのです。
また、毎年旧暦の12月3日には猪掛祭が行われます。これはミケイリノミコトが退治した鬼八の魂をしずめるために、鬼八の好物だった猪を奉納するもの。鬼八は退治された後も何度もよみがえり、早霜を降らせて作物を腐らせたため、猪を奉納し鎮魂することで早霜の害を防いだとされます。
「私が神職に就いて41年になりますが、毎年旧暦12月3日に今も行っています。自分の代で変えて、何かあっても困りますから」と笑いながら話す後藤宮司に、伝統を守り続けることの意義、役割の重さを垣間見ました。
このような祭礼を長く受け継いできたのは、夜神楽を今なお守り続ける、地域の人達の力もあるかもしれません。
「神社はもともと、地域性と家族性が結びつくところ。夜神楽は、その年一年良いことがあった家も悪いことがあった家も一緒になって、共同体の一員であることを再確認する場でもあるのです」。神社に参拝する若者が増えたのは、「日本人としてのルーツを知ることで安心するからでは」と語る後藤宮司。
村の人々が共同体として生活をしていた古き良き日本の形を今に留めるからこそ、地方から発信できることがあるはずと強く語っていました。