神話のふるさと特集 第伍回
特集 宮司が語る 第伍回
大御神社 新名光明 宮司
榎原神社 岩切宗治 宮司
 日南市南郷町の榎原神社が縁結びの神社として有名になったのは、摂社・桜井神社に祀られる万寿姫(ますひめ)の存在が大きいようです。神社にまつわる伝承とともに、万寿姫の話を岩切宗治宮司にお聞きしました。
神仏混交の歴史があり
「えんむすび絵馬」
万寿姫の祀られる桜井神社
縁結びや子宝祈願の元となった万寿姫
 榎原神社は、第3代飫肥藩主の伊東祐久公(いとうすけひさ)によって、1658年に飫肥藩の鎮守として鵜戸神宮から勧請して創建されました。昔から縁結びにご利益があるといわれていますが、創建にも関わる万寿姫の話を抜きに語ることはできません。
万寿姫は小さい頃から神仏に興味あり、大人になってからも人々の悩みを解決していたといわれています。当時の飫肥藩主・伊東祐久公は世継ぎができないと悩んでいましたが、万寿姫からの助言を受けて無事に男児を授かります。そこから伊東家の崇敬が篤くなり、万寿姫の願いにより榎原神社は建立されたのです」と岩切宮司は話してくれました。
 万寿姫が生きている間は、相談者がひっきりなしに訪ねてきていたといわれるほど、噂が知れ渡っていたようでした。亡くなって摂社・桜井神社に祀られてからも、人々の信仰は篤く、昭和30年頃までは宮崎市内から参拝のための貸し切りバスが出るほどの賑わいだったとか。今でも“縁結びといえば榎原さん”と言われる理由もよく分かります。
境内の建造物に一見の価値あり
 拝殿・本殿をはじめ、朱塗りの楼門、鐘楼は大変見応えがあります。
 入母屋造の拝殿と両流造の本殿との間に“石の間”と呼ばれる室が設けられた社殿は、権現造風の造りになっています。また、境内に楼門や鐘楼があるのは、昔、貴山地福寺という真言系のお寺が同じ敷地内にあった名残だそうです。
 本殿(石の間拝殿を含む)、楼門、鐘楼は県の有形文化財に指定されており、特に鐘楼は、県指定有形文化財建造物の第一号となっています。
 毎年11月9日は例祭日で、御神輿が練り歩き、大人から子どもまで参加して地域を盛り上げています。また桜井神社の縁日祭は旧暦の3月15日・16日に行われ、神楽を2番奉納しているそうです。10年、20年の節目には、桜井神社ご神体の御開帳も行われます。最近行われた御開帳は、平成25年だったそうです。
 普段の静けさとは変わり、お正月には3万人もの参拝客があるという榎原神社。人々を幸せにしたいと願う万寿姫の想いが今でも神社の中に息づいているのでしょう。
拝殿の彫物
県下では珍しい袴腰付鐘楼
平成26年12月15日
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BOOK
榎原神社宮司 岩切宗治
岩切 宗治
昭和11年12月17日 日南市南郷町生まれ。
昭和25年 目井津霧島神社で神職に就く。
平成8年 榎原神社宮司に就任。
目井津霧島神社宮司も兼務している。
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